雪が降らないはずの地域で降雪があると、立ち往生した車による事故や渋滞で道路交通は大混乱になります。
「立ち往生」の理由は「車が雪道でスタックしたから」。
スタックとはタイヤが接地面との摩擦がなくなるために空転して、車が動かせなくなることをいいます。
では、なぜ、雪道でスタックしてしまうのでしょうか。
書いてあること
雪道用の装備をしていなかったから
一番の原因は「雪道用の装備をしていなかったから」です。
2015年、全国の国道での立ち往生547件、9割以上がチェーン不着装、ノーマルタイヤの車も25%あったとの発表がありました。
雪道用装備といえば、スタッドレスタイヤとチェーンです。
これらの装備をしていないとスタックしてしまう確率が確実に上がります。
雪国の人にはおなじみのものですが、その効果について解説しましょう。
スタッドレスタイヤとチェーン
ノーマルタイヤよりも深く刻まれた溝と、「サイプ」と呼ばれる細かい溝が刻まれています。
また素材は、低温でも路面に密着する特殊ゴムを使用しています。道路面への接地と摩擦を高めます。
ブレーキをかけてからの制動距離がノーマルタイヤと比べて短くなっています。
金奥や非金属(ゴム、ウレタンなど)の素材で、タイヤに巻きつけて使います。
スタッドレスタイヤよりも凍結路面や圧雪に強く、収納がコンパクトであることや、スタッドレスタイヤに比べて価格が安いのが特徴です。
積雪・凍結道路ですべり止め措置を取らない運転は法令違反
雪道で積雪時の装備を怠って走行すること自体が、危険です。
道路交通法第71条6項
“道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項”[1]
http://www.houko.com/00/01/S35/105.HTM
この条項を根拠にして、沖縄県以外の各都道府県の公安委員会により、詳細な遵守事項が定められています。
例えば、東京都では、
「東京都道路交通規則」の第8条(運転者の遵守事項)6項
“積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態にある道路において、自動車又は原動機付自転車を運転するときは、タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること。”[2]
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012199001.html
と定められており、これらに違反すると5万円以下の罰金が課せられます。
スタッドレスタイヤやタイヤチェーンが雪道に有効なことは、おそらくほとんどのドライバーが知っていることです。
しかし「積雪・凍結道路ですべり止め措置を取らない運転は法令違反」で、罰金が課せられることを知っている人もいるため、渋滞だけでなく重大な事故にも発展しかねない雪道のスタックについて、ドライバーの自覚を促す必要があります。
雪道走行のコツを知らなかったが運命の差
「2015年に全国の国道での立ち往生547件、9割以上がチェーン不着装、ノーマルタイヤの車も25%あった」という調査から、「スタッドレスタイヤの車も75%あった」という事実に気が付きます。
そして、スタッドレスタイヤにチェーンも装備していたにもかかわらずスタックしてしまった例も極少数あったこともわかりました。
運悪く、雪道に適した走行をしていなかったことが原因でスタックをおこしてしまった例も多いです。
スタックしない雪道走行のコツ3つ
発進時にアクセルを急に踏まない
スタックの典型は、アクセルを急に踏むことでタイヤと接地面の雪の間に摩擦がなくなってしまうことです。発進時にはゆっくりアクセルを踏みましょう。
スピードを落として走る
これは、当然といえば当然です。
スリップしやすい雪道でスピードの出しすぎは禁物です。
また、ブレーキはいつでも踏める状態にして、優しくゆっくり何度も踏み込むようにしてください。
轍は凍結の危険があるのでやや外して走る
他の車が踏み固めているので、轍の部分は圧雪状態になり、凍結している可能性が高いです。
積雪量にもよりますが、轍部分からやや外れ気味で走行する方が安全です。
無理に運転をしないこと!
普段、降雪のない地方に住んでいる一般ドライバーは、雪道走行をしないことを強くおすすめします。
しかし、都心でもしばしば降雪がある昨今ですから、いざというときのために準備はしておいた方が良いかもしれません。
車に積んでおきたいスタック防止のためのグッズ
スコップ
雪にタイヤが埋まっているときはタイヤを掘り出し、できるだけ路面を露出させるようにします。
バスタオル・毛布など
発進するときに駆動輪の前にかませるように敷いて使います。麻袋やフロアマットなど、敷ければなんでもよいです。
砂
道路によっては、路肩に砂箱がある場合も。駆動輪の周りに撒いて使います。ペットボトルなどに入れておくとよいでしょう。
けん引用のロープ
自力ではどうにもならないときは他の車にけん引してもらうしかありません。専用のけん引用ロープでないと、ちぎれてしまうこともあります。
以上のグッズに代わる専用の製品も販売されています。雪が降る前に揃えておきましょう。
雪道で車がスタックした場合の脱出方法

いくら対策していても、突然スタックしてしまう場合があります。スタックするとタイヤが空中で回転する状態になるため、アクセルを踏んでも前にも後ろにも進みません。脱出しようとして無理にアクセルを踏むと、状況が悪化してしまう恐れがあります。
万が一スタックした場合でも冷静に対処できるよう、脱出方法を確認しておきましょう。
ここでは、雪の塊に乗り上げて動かない場合と、新雪に埋もれて動けない場合の2パターンに分けて解説します。
雪の塊に乗り上げて動けない場合
雪の塊に乗り上げて動けない場合は、まずはスコップなどで車体の下やバンパー前後の雪を少しずつ除去してください。スコップが手元にない場合は、手で雪を取り除くか、周りの人に貸してもらいましょう。
雪を取り除いた後は、タイヤが地面に着地しているか確認します。着地していなければ再度スコップで車体周辺の雪を除去していきましょう。
その後は、アクセルとブレーキを交互に素早く小刻みに踏んで、車体を振り子の要領で動かしてください。車体が引っかかっている雪を少しずつ踏み固めるイメージで操作しましょう。踏み固めたらゆっくりと車を発進させて脱出します。
何をしてもスタックから脱出できない場合やスコップが用意できない場合は、助けを呼び、別の車にけん引してもらうのがベストです。助けを呼ぶ場合は、2台とも雪道にはまらないよう、なるべくご自分の車よりも重い四輪駆動車を呼ぶことをおすすめします。けん引用ロープは斜めにならないようにセットし、けん引中はクラクションで合図を取り合いながら走行しましょう。
別の車が通りかからない場合はどうする?
山間部などの別の車が通りかからない場所でスタックした場合は、ロードサービスを依頼してください。万が一の衝突事故を防ぐためにハザードランプを点灯させましょう。三角表示板や発煙筒があれば、他の車から見えやすい位置に置いてください。
また、別の車を待っている間は、低体温症にならないよう体を温めて待ちましょう。車の暖房をかけ、毛布があれば体にかけて防寒対策をしてください。車のマフラー付近に雪が積もっている場合は、放置しておくと車内に一酸化炭素が充満する場合があります。一酸化炭素中毒にならないようマフラー付近の雪は除去し、窓を開けて換気してください。
また、小まめに体勢を変えてエコノミー症候群の発症を防ぎましょう。
新雪に埋もれて動けない場合
新雪に埋もれて車が動かなくなった場合も、雪の塊に乗り上げた際と同じような方法で脱出を試みましょう。
まずは車に乗ってアクセルとブレーキを交互に素早く小刻みに踏み、振り子のように車体を前後に動かします。前後に動かして雪をタイヤで踏み固めたら、スコップでバンパー下や車体の下の雪を除去しましょう。その後、車体が動きそうならタイヤのグリップ力を使ってゆっくり発進します。
豪雪地方では、道路のすべり止め用で使用される砂が入った砂箱が周辺に設置されている場合があります。砂箱がある場合は中の砂をタイヤ周辺に振りかけ、タイヤのグリップ力を強化して脱出を試みてください。また脱出用ラダーを持っている方は、駆動輪の下に敷いてみるのもグリップ力を高めるのに効果的です。
それでもスタックから脱出できない場合は、周辺の人と一緒に車を押したり、別の車を呼んでけん引したりする方法を試しましょう。助けを呼べる車が通りかからない場合や悪天候で車が来られない場合は、雪の塊に乗り上げたときと同様にロードサービスを呼びましょう。
6時間2,000円から利用可能