今回は、車の自動運転のレベルを解説したうえで、現在車の自動運転技術がどこまで進歩しているのか、そして自動運転システムの将来的な見込みや現状の課題など、気になる情報をお届けします。
書いてあること
車の自動運転はレベル3から運転の主体が車側に
車の自動運転技術の進歩について知る前に、まずは「車の自動運転レベル」を知っておきましょう。
- レベル0:自動運転機能はなく、運転手がすべての運転操作をする普通の車。
- レベル1:前後・左右いずれかの動きにかかわる運転操作の一部を自動で行う。
- レベル2:前後・左右両方の動きにかかわる運転操作の一部を自動で行う。
- レベル3:高速道路上など、限定された条件のもとで自動運転システムがすべての運転操作を実施する。ただし、緊急時などに自動運転システム側から要請があった時は運転手が運転操作をしなければならない。
- レベル4:限定された条件のもとで自動運転システムがすべての運転操作を実施し、なおかつ運転手が自動運転システム側から要請に応答する必要もなくなる。
- レベル5:限定条件なしで、自動運転システムがすべての運転操作を実施する。運転手が自動運転システム側の要請に応答する必要もない。
この中で、レベル1および2は「運転支援技術」と呼ばれており、あくまで運転操作のサポート役という位置づけです。そのため、事故を起こした際の責任は全てドライバー側にかかることになります。
レベル3以降こそが、本当の「自動運転技術」と呼ばれるものです。このレベルからは、自動運転システムが運転操作の主体となり、事故の責任も車側にあるという理屈が成り立つ状態となります。
日本における車の自動運転技術はレベル3相当に到達
日本における車の自動運転技術はかなり進歩しており、いくつかの自動車メーカーがすでに「レベル3相当の自動運転技術システムを搭載している新車」の発表をしています。
したがって、車の自動運転技術は2018年10月現在の時点でレベル3までは到達している状態です。
しかし、車の自動運転というのは、技術だけが発達すればいいというものではありません。自動運転技術を搭載した車が、公道を走れるための法整備も必要となってきます。
今のところ、公道で走ることが法的に認められているのはレベル2までであり、完全なレベル3の自動運転技術は認められていません。
そのため、実質的にはレベル3の自動運転技術を有している車であっても、その機能を一部不稼働にして、あえてレベル2にグレードダウンしているというのが実情です。
つまり、日本の車の自動運転技術自体はレベル3の段階まで進歩しているものの、法整備がまだ追いついていないということです。
自動運転レベル3の車を普及させるにあたって生じる課題
「高齢者の自動車事故が多発する現状を考えると、自動運転のほうが安全なのだからさっさと法整備をすればいいのに」と考えてしまいがちですが、普及させるにあたってはいくつか課題があります。
自動運転システムを搭載した車が高額になってしまう課題
高額になるのは車本体の価格だけではありません。搭載するセンサーやコンピューターなど、自動運転システムのプログラムに関する部分の整備に対応できない整備工場が多くなるので整備の依頼先が限られてしまいますし、点検・整備する箇所が多い分、整備費用もぐっと高くなってしまうことが予想されます。
運転手の責任感やモラルが求められる課題
自動運転技術の中でもレベル3は、運転操作の主体が運転者から自動車に移行する過程の技術。運転手の責任感やモラルなどが求められる部分もまだ大いにあるため、そのあたりの意識を運転手へ普及させる必要があることなども課題となっています。
ただし、車の自動運転技術の実現に向けて、これらの課題を解決しようと進歩しつつあるのも事実です。たとえば日本政府は東京オリンピックの2020年ごろまでにレベル3の市場化を目指すロードマップを策定するという動きを見せています。近い将来には、完全なレベル3の自動運転技術を搭載した車が高速道路などを走れるようになるという見込みもあります。
自動運転の実用化はいつ?
日本国内では自動運転レベル3まで実用化が完了しており、レベル4実用化に向けての取り組みが行われている段階です。2025年を目途に乗用車での実用化を目指しているといわれています(※)。
ここでは、自動運転レベル4以降の現状について紹介します。
※参考:国土交通省.「自動運転の実現に向けた動向について」p3.https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001485115.pdf ,(2024-10-02).
レベル4相当の自動運転技術
自動運転レベル4では、一定区域や自動車専用道路において場所や速度、天候などの条件がそろった場合にのみ、ドライバーを必要としない自動運転が可能です。
そのため、運転中に自動運転システムが機能する条件「ODD(運行設計領域)」から外れた場合は、車両の停止または手動運転に切り替わります。
ODDは自動運転システムを開発する会社が設定しており、それぞれ異なるのが特徴です。システムの改善によって場所や環境などの制限がなくなれば、自動運転レベル5(完全運転自動化)が実現するといわれています。
道路交通法改正で自動運転レベル4解禁
2023年4月に道路交通法が改正されたことで、国内における自動運転レベル4が解禁されました。
ただし、レベル4の実用化は移動サービスのみに留まっており、乗用車での実用化はまだ行われていません。レベル4で公道を走行するには、走行予定地域を管轄する都道府県公安委員会の認可を得る必要があります。
そのため、公安委員会が定める条件によっては、レベル4実用化で守るべき条件も変わるでしょう。
今後は2025年を目途に約40カ所、2030年を目途に全国100カ所以上で移動サービスへのレベル4実用化を目指す状況です(※)。
※参考:国土交通省.「自動運転の実現に向けた動向について」p3.https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001485115.pdf ,(2024-10-02).
バス・タクシーでの実用化を開始
国内での自動運転レベル4の実用化は、バス・タクシーで先行して行われています。
2023年4月の道路交通法改正を受けて、福井県永平寺町では国内初となるレベル4を活用した移動サービスをスタートしました(※)。この移動サービスは永平寺町の遊歩道「永平寺参ろーど」のうち約2kmを自動で走行するものです。
他にも東京都では、羽田イノベーションシティ内をシャトルバス「ARMA」がレベル4を活用して運行されています(※)。
さらに、経済産業省では、公道での「自動運転レーン」の設置が発表されました(※)。この取り組みが実施されれば、レベル4の実用化は急速に広がるでしょう。
※参考:経済産業省.「国内初!レベル4での自動運転移動サービスが開始されました」.https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230522004/20230522004.html ,(2024-10-02).
※参考:羽田みらい開発 株式会社.「8月1日より国内初レベル4自動運転バス運行開始」.https://haneda-innovation-city.com/news/2024/08/08/2685/ ,(2024-10-02).
※参考:経済産業省.「自動運転車用レーンの設定区間」.https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/lifeline_kaigi/dai2_0915/pre10_siryou_nexco.pdf ,(2024-10-02).
自家用車・トラックは2025年を目途に実用化を目指す
高速道路ではすでに自動運転レベル3の実用化が実現しており、日本政府は2025年を目途にレベル4の実現を目指しています。
今後はレベル4の自動運転システムを搭載したトラックによる、物流サービスの実用化が進められる予定です。
経済産業省では高速道路の一定区間における自動運転車優先レーンの設置と実証走行の開始を発表しました。トラックでの実証走行から始まりますが、高速バスや乗用車の走行実証も想定されています(※1)。
自動運転レベル3では高速道路の走行に当たって速度条件が60km以下から130km以下まで引き上げられているので、レベル4でも同様に速度条件の引き上げが予想されます(※2)(※3)。
※1参考:国土交通省.「自動運転に関する国際基準策定の取組、国際基準改正の概要」p1.https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001487785.pdf ,(2024-10-02).
※2参考:国土交通省.「自動運転の実現に向けた動向について」p7.https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001485115.pdf ,(2024-10-02).
※3参考:国土交通省.「高速道路での自動運転トラックの実証について」p2.https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001754017.pdf ,(2024-10-02).
自動運転レベル4が実用化されるメリット
自動運転レベル4の実用化により、ドライバーの負担軽減が可能です。そのため、交通事故の減少や渋滞の緩和など、さまざまなメリットが得られる可能性があります。
ここでは、自動運転レベル4が実用化されるメリットを解説します。
交通事故の減少
交通事故の減少は、レベル4の実用化で期待されるメリットの一つです。
交通事故が起こる要因のほとんどは、ヒューマンエラーによるものです。特に死亡事故の大半は、運転者の違反が原因となっています。
走行時の操作が自動化されるだけでも、交通事故は減少すると考えられます。自動車の多くはNV/PD(歩行者検知)やAEBS(衝突被害軽減ブレーキ)を搭載していますが、事故多発ポイントの走行中に自動で減速するような技術が搭載されれば、交通事故を防止できるでしょう。
渋滞の緩和
自動運転レベル4が普及することで、渋滞の緩和も期待されています。
GPSの普及により、リアルタイムで道路状況を把握できるようになりました。自動運転では適切なルートを判断できるため、渋滞を避けた走行も可能です。
また、渋滞の原因は上り坂やトンネルなどで、ドライバーが無意識に速度を落とすことにあります。レベル4が実用化されれば一定の速度を保って走行できるので、渋滞の緩和につながるでしょう。
ドライバーの負担軽減
自動運転レベル4が実用化されれば、ドライバーの負担を軽減できる可能性があります。
特定の区間だけでも運転を自動化することで、ドライバーの疲労やストレスの軽減が可能です。長距離トラックや高速バスのドライバーは操作から開放されるため、今までよりも楽に長距離を移動できます。
また、ドライバーが行う周囲への注意も補足的なものになり、運転中にリラックスして過ごせるでしょう。
自動運転レベル5の解禁にはまだ至っていない
まだ解禁されていませんが、将来的には自動運転レベル5の実用化が期待されています。
レベル5では完全な自動運転を目指しており、これまでのように走行エリアが限定されません。全て自動運転システムに任せられるので、ドライバーが不要になります。
ただし、レベル5の実用化にはセンサー類やAIなどのさらなる進化が必須です。多数の課題が残っているため、解禁までには時間がかかるといわれています。
まとめ
技術的にはレベル3がほぼ実現できる水準になっているものの、法整備が追いついておらず、実際にはレベル2までしか公道を走れないのが現状の自動車運転技術。
しかしレベル2であっても、限りなくレベル3に近い技術を持つ新車が登場してきているのも事実です。
そうした「レベル3に近い自動運転技術を持つ車」の実力を試したいなら、一度レンタカーを利用してみることをおすすめします。運転支援システム搭載の車種を指定して、ぜひその利便性と技術の進歩を実感してみましょう。
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